手のかかる子

盆栽にも、手間をかけずとも素直に育つ優等生もいれば、
一筋縄ではいかない、何かと手のかかる樹もあります。

本日は、後者のご紹介です。


今年鉢上げしたカエデです。
(葉刈りが出来て、枝が見てもらいやすいので、カエデの登場が多くなりがちですね)

仕上がりで中品サイズの太短い樹です。
大きな傷や嫌味な部分のある幹など、ネガなポイントがありますが、
幹の迫力や足元の良さ(埋めてあります)が気に入っての購入です。


作業後の画像です。

欲しい場所からの芽吹きが見られなかったので、
自分の枝を使って接ぎ木しました。

ドリルで台木に穴を開け、接ぎ枝を通す「通し接ぎ」という手法です。
引っかけ接ぎ(台木に溝を掘り、そこに接ぎ枝を当てる方法)に比べ、
活着後の枝元に違和感がないのがメリットです。

ただし、細い穴に接ぎ枝を通さなければならないので、
葉刈りのきく樹種でしかできません。

都合、5カ所に通し接ぎを施しました。


向かって左からの画像です。

画像のように、通した枝に即針金かけする事もあります。

大きな傷の縁への接ぎ木ですので、
活着すれば傷巻きのアシストにもなり、一石二鳥です。

大きな傷の右斜め上にコブ状の嫌味な盛り上がりがお解りいただけるでしょうか?
いますぐ削って解消したいのはやまやまなのですが、
今ある傷と合わせてとても大きな傷になってしまいますので、
傷が巻いたあと、改めて処理する予定です。


欲しいところに芽当たりがないことも、大きな傷のそばに放置できないコブがあることも、
仕入れ時に判っていたことですが、
手間と時間がかかっても、それを解消する手段と技術があれば仕入れることも多々あります。

傷無く、足元も振りもコケもばっちりで、
素直に育ってくれそうな素材がたくさんあれば、それに超したことはありませんが、
そんな逸材がそうあるわけではありません。


盆栽に仕立てる上で致命的な難点のある素材には、手を出すべきではないでしょう。
しかし、修復可能な難点があるものの、それを上回るほどの魅力を持った素材ならば、
持ってみるのも良いかもしれませんよ。

手のかかる子ほど愛着がわきますよね。